夜の車を見ていると
こんな静かな夜に
そんなに急いでどこへ行くのだろうと
その車内はどんな空気に満ちているかだとか、
踏み潰される小石はどんなカタチだとか、
かき乱される空気の速度だとか、
そんなことを思うんです
そして
何も話せなかったあの日のことを思い出します
何も話さずに
タクシーに乗って
カチコチとぴったり、指示に委ねて
私は頬の熱をこっそり窓につけて
何かを正しい在り方で
伝えていたら
どうなっただろうとも思うのですが
そうすると
こんな夜の、こんな気持ちには
ならなかっただろうと思うと
それはそれでよかったのかもしれないので
耳を澄まして
風の中進む音を聴くんです
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